去る三月十五日、"新垣勉コンサート&コーチング・カンバセイション"のタイトルで、沖縄県出身で盲目のテノール歌手新垣勉のコンサートを主催した。場所は千七百名収容の沖縄コンベンションセンターである。全席ほぼ埋まるほどの大盛況さで、さすがに彼の人気の高さを感じさせる機会であった。
「人は誰でもそれぞれの魅力や輝きを持っている。他人と比較しないでオンリーワンの人生を!」という彼の考え方と私どもが提唱している「あなたの能力はあなたが期待する以上のものである。そしてあなたの中に答えはある」というコーチングの基本理念が基底の部分で共通しているということと、東京在の藤本ゆかり(私の娘)が日頃から親しく付き合っていることが企画の発端である。
さて、あまり聞きなれない「コーチング」という言葉だが、語源はスポーツのコーチからきている。しかし、従来のコーチは「現役時代に自分が修得した知識や技術を選手に教え込む」というイメージが強いが、コーチングの定義は、相手の自発的な行動を促進するコミュニケーション・スキル(技術)ということである。従ってここでのコーチは、教えるのではなく、その人が自ら学ぶことを助けるために存在するということである。
一九八○年代にアメリカで系統化され、日本に導入されたのは一九九〇年代の後半だから聞きなれないのも当然でしょう。しかし今では、ビジネス界から医療業界、そして教育界などからも関心が高くなってきている。中でもコーチングの根幹をなすコミュニケーションとミッション(使命)は今もっとも必要とされている。それは職場での人間関係の複雑さ、医療現場での医師と患者の不信感、学校での学級崩壊、そして家庭内暴力などいずれを見てもコミュニケーションの不足が大半を占めていること、さらに、生きるために不動のものでなければいけないミッションの弱さが主因だと思われるからだ。
上からの指示命令型の日本企業の組織論、すなわち「操作主義的経営」からすると、「本人が答えを持っている」とするコーチングについては、「そんな悠長なことが言っておれるか、本人が考える前に俺が教え込んでやる」ということになる。しかし、人は誰でも他人から教えられるよりも自ら、「その意味を考えて行動した場合、すなわち"自己説得"した場合が本気で行動する」ことを考えると、コーチングに対する理解が早まるかも知れない。
今、月に一回那覇で行われるワークショップ(研究集会)では、企業の上級管理者、大学の若い先生、公立小学校の管理者と初任者などいろいろな職種の方々が真剣に参加している。
コーチングは、これからビズネス界、医療界、教育界ならびに家庭など、あらゆる組織の活性化のために、個人の尊厳を柱に活かされるコミュニケーション・スキルとして活用されるべき、まさに「みちしるべ」のような気がする。
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