会社勤めをしていた頃は毎月の給料日が待ち遠しかった。会社経営をするようになってからは毎月の給料日があっという間にやってくる。立場が違えばこんなにも感覚の違いを感じるのかと、毎月のように痛感する。
ところで、ひと昔前のリーダーシップというと、業務管理を執行するマネージャーが部下たちを率いていくことを意味していた。しかし今では、むしろマネージャーが明確なゴールと魅力的なビジョンや価値観を提示することで、これに共感したメンバーたちが自発的に仕事に取り組める環境を整えることを意味している。
自立型社員育成を目的にコーチングを導入する企業が多いが、リーダーが明確なゴールや魅力的なビジョンを示せば社員は自立しやすくなる。例えば、「目指すはあの山の頂上にある赤い旗」というふうに、明確にゴールがどこにあるのかを知っている社員は、途中で上司とはぐれたとしても、ひとりで何としてでも山の頂上の赤い旗を目指して前へ進む。しかし「右に曲がれ。今度は左。次はまっすぐ」と、場当たり的な指示しか出されていない部下は一人になったとき、上司から次の指示が出るまで止まって待っている。ゴールを知らされていないから、どこに向かって進めばいいのかわからないのだ。
魅力的なビジョンを示された社員は、自発的に行動を起こし始める。人は良いイメージをすると、そこに参画したくなるからだ。しかし、ただただ企業理念を業務的に読み上げているようでは何もイメージができない。コーチとして企業に入ると社員の前で創設者、または継承者に、創設時の若き日の情熱についてコーチングすることが多い。十分な資本も実力も実績もなく、毎月の給与を支払うのに駆けずり回っていた話を聞くだけで、社員の心は揺り動かされる。そしておのずと「自分はどうあるべきか」を考え始める。
私たちコーチは「コーチングの技術を教える研修講師」と思われがちだが、実際にやっていることは「肌で感じる成果」、すなわち、社風や企業文化の改革を行っているのである。 |