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「コーチングで強くなる〜プロ・コーチも活躍中〜」
2001/11/26 週間東洋経済
 

掲載記事会社の体質は、上から下への指示命令型になりがちだ。一方、社長の言う「皆が自ら働く」会社になるには、従業員が自発的人間に変化する必要がある。コーチングがこのギャップを埋められるのではと思ったのだ。
デビッドさんの目的は社内でのコミュニケーション、つまりビジネス・コーチングだ。ただ、デビッドさんが2000年3月から受講を始めたコーチ21では、研修プログラムでクライアントを取りパーソナル・コーチングの営業を行うよう指導している。これが会社にサイドビジネスと受け取られると問題があり、さらに社内ではまだコーチング導入の準備段階にあるため、あえてデビッド・Sのコーチ名を使っている。現在はパーソナル・コーチングはやめ、社内コーチングに的を絞っている。
デビッドさんは最近職場を移ったが、元の職場の上司の許可を得て、元部下たちにグループ・コーチングを研修している。各地の事業所や工場でいろいろな人たちに会い、その状況を社長に伝えるのが彼らの仕事だが、若い社員だと、現場のベテランと折衝して客観的な情報を得るのは結構難しい。そのスキルアップを図るのが、デビッドさんのテーマだ。「いきなりコーチングといっても、何それ?と言われる。一定の成果を上げたところで、堂々と旗振りをしたい」というのが、当面の目標だ。

書籍コーチングを学んだ人たちには、独立したプロのコーチとして活躍したいと考える人も少なくない。
日本IBMで秘書を務める藤本ゆかりさんも、来年2月に現在の職場を退職し、4月からプロとして独立する。コーチングとの出会いは、やはりテレビニュースだった。「スペシャリストの時代が言われるなか、ゼネラリストはリストラ対象になります。私も危機感を感じていましたが、秘書の仕事にはこだわりを持っていました」(藤本さん)。
藤本さんは今の職場も含め、秘書キャリアが長い。ボスとの信頼関係が結ばれると「今度の新人はうまくいかないけれど、どう接したらいい?」といった意見を求められることも多かったという。「秘書である以上、こうしたら、とストレートに答えることはありません。ただ、具体的にどんなところですかと問い返したり、何とかひもといていければと思って、答えていました」。
相手に答えを与えるのではなく、問いかけによって自発的に気付かせる。そうしたスキルを秘書として身に着けていた藤本さんは、もともと天性のコーチだったともいえる。
藤本さんは、コーチ21で勉強を始めた2000年1月の当初から、プロ・コーチになることを決意した。コーチング・スキル以外も必要と考えた藤本さんは、営業のプロや元上司など知人を集め「相談役」とした。「コーチングなんかビジネスにならないという人ばかり集めて、それでもビジネスするにはどうしたらよいかアドバイスをうけたのです」。
研修プログラムの一環に位置付けられているパーソナル・コーチングについては、知人・友人など10人を相手にスタートした。三ヶ月は無料の試用期間として、その後、全員を有料クライアントとして獲得した。
なかでも印象的だったのが、元AV女優へのコーチングだったという。「雑誌で彼女を見掛け、きれいで賢い人だと思いました。でも、その後、AVを引退して女優を目指したのにダメだったと聞きました。彼女を捜し出し、ぜひコーチをやらせてくださいと申し出たのです」(藤本さん)。彼女へのコーチは半年間続き、見事に女優として大成したという。

noスキルよりキャラクター
コーチはおカネだけではない


プロとしての独立を決意した現在、藤本さんのクライアントには、企業が二社、パーソナルが十六人、「会社に何かあったら来てくれ」という「顧問コーチ」先が二社ある。
ただ、「プロ・コーチはおカネをもらうだけが能ではない。おカネを出さなければコーチング・スキルを出さない、では寂しい」と言いきる藤本さんは、ビジネスとしてのコーチングを離れた活動も行っている。それが、テノール歌手の新垣勉氏との「コラボレート・コーチング」だ。
新垣氏は、ラテン系アメリカ人の父親と日本人の母親の間に生まれたが、助産婦の過失で生後すぐに失明した。その後、両親は離婚しいずれも失踪、天涯孤独のなかで成長し、武蔵野音楽大学声楽科卒業後に歌手活動を開始した。
藤本さんは新垣氏にコーチングをしているわけではないという。「実際に歌を聞きに行き、コーチングにかかわらずサポートしたいと思いました。大変な苦労を乗り切ってきた方なので、迷いはなく、助言を求められることもありません。彼の生き様を知った人は、癒されたり励まされたりします。企業向けにコーチング研修を行った際など、その中の一回に、新垣氏のコンサートを取り入れる形を取りたいと思っています」。
現在、藤本さんは四四ページにも登場してもらった榎本英剛氏のコーチングを受けている。「コーチはスキルではなく、キャラクター。他人をどれだけ大事にできるかが、プロのコーチには必要だと思います」というのが藤本さんの信念だ。