電気工事を中心に、オール電化や太陽光設備、空調工事などを手がける株式会社宜野湾電設では、2年前からコーチングを取り入れている。コーチングとは、対話を通じて目標達成や技術の向上などのために相手のやる気を引き出し、自発的な行動を促す手法。副社長で、社内コーチでもある仲村悦子さんは「私はコミュニケーションが下手で、社員に対しても家族に対しても、指示、命令型の会話しかできませんでした。意見を言われても、『そうじゃない』『そんなのできる?』と、頭ごなしに押さえつける感じ。そういうコミュニケーションに何か引っかかるものを感じていましたから、どうにかしたいとコーチングを学び始めたんです」と振り返る。
コーチングを学ぶ中で自分自身と向き合い、これまでのコミュニケーションの問題点が見えてきたという悦子さん。
「話しやすい場を作ることや相手を思いやる気持ちが足りなかったことに気付きました。レポートの一環で社員にあてた手紙を書く中で、社員をいかに愛しているかを実感。社員全員にコピーを渡し、自分の気持ちを素直に伝え、分かっているだろうと思って口にしなかった『ありがとう』『頑張ってるね』といった声かけを意識してするようにしました」
コーチの資格を取得した悦子さんは、自分自身の言動を改めると同時に、会社の活性化につなげようと、社員一人ひとりとのコミュニケーションに個人コーチングを取り入れた。しかし、突然のことに、取締役も社員も戸惑いがあったという。
専務の仲村明さん(34)は「私も戸惑い、反発を覚えました。業績アップを図るためには他にやることがあるんじゃないかと思ったんです。でも、自分もコーチングに触れ、その効果と必要性を実感。もっと深く知りたいとコーチングを本格的に学び、副社長の考えを一緒に実践することに。徐々にみんなが自然に思ったことを話せる雰囲気が生まれ、仕事のアイデアや会社への要望も飛び出すようになった。結果として、業績アップにもつながりました」と笑顔を見せた。
おすすめコーナー2_イメージ おすすめコーナー2_イメージ 宜野湾電設の社内風景。上司に対しても相談しやすい和やかな雰囲気だ。 沖縄電気工業組合の理事長を務める社長の仲村春善さん(中央)を筆頭に、副社長の悦子さん(左奥)、専務の明さん(右)課長の新吾さん(左手前)と家族で会社を経営。悦子さんと明さんはコーチの資格を持ち、新吾さんは資格取得に向け勉強中だ。
一人ひとりと語り合う
悦子さんは、7カ月かけて15人の社員一人ひとりに業務時間内に個人コーチングを行った。
「仕事のことだけでなく、たわいもない話も交えながら『どんな仕事がしたい?』『5年後にはどうなっていたい』と投げかけ、社員の思っていることを自由に話してもらい、語り合いました。コーチングというと何か特別なこと、難しいことをするような気がしますが、相手の話をよく聴き、相手を認めたり、受け入れたりする中で信頼関係が生まれ、その人の持っている能力も引き出すことができるんです」
個人コーチングを受けた工事部の東江さん(35)は「今までは、仕事のことばかりで頭がいっぱいで他のことを考える余裕がなかった。コーチングを受け、将来の自分を考えて仕事に取り組むようになりました。独立して会社を持ちたいという目標を持って頑張っています」と笑顔。
また、総務の宮里さん(38)は「仕事のことを上司に相談する際、以前は周りのことを意識してしまい、戸惑うことがありました。今では作業の流れの中でその都度、確認ができるようになりました」と話す。コーチングを受け、自分の気持ちの変化を実感しているよう。また、毎日の朝礼でも変化が見られる。
「当番に倫理の本を読んでもらい、その感想を数人に述べてもらっているのですが、積極的に発言する人が増えてきた。技術者は、かもくで自己表現が苦手な人も多いのですが、自分の意見をきちんと伝えられるようになりました。社員それぞれが他の人の発言を受け止め、認め合えるようになったのも大きな前進ですね」と明さん。発言の中には、ちょっとしたミスをしそうになったというベテラン技術者の告白や、仕事のアドバイス、アイデアの提案もある。
「個人が体験した出来事を社員全員が共有することで、ミスを防いだり刺激になったりし、周りと確認し合える体制ができています。感動させられる発言もあり、温かい気持ちで仕事に取り組めています」と胸を張る。
社員からの希望に応え、今月からは個人コーチングを再開するなど、その効果は社内に浸透しつつある。
「自分の気持ちを口にすることや認め合うことが、コミュニケーションの第一歩。仕事をするのは家族のため。会社でやっているコミュニケーションを社員一人ひとりが身に付け、家庭に持ち帰って実践してくれると、家族のコミュニケーションもよくなり、仕事に対する意欲も増す」と悦子さん。社員の家族まで視野に入れ、日々活動を続ける。
社員同士が思ったことを素直に伝え合うことで信頼関係が築かれ、コミュニケーション力の向上につながる。
